POCトロポニン検査は救急からの早期帰宅につながらない?:WESTCOR-POC試験
Effectiveness of Point-of-Care High-Sensitivity Troponin Testing in the Emergency Department: A Randomized Controlled Trial
背景
高感度心筋トロポニン(hs-cTn)検査の登場により、急性冠症候群の迅速診断プロトコルが実現した。最近ではポイントオブケア(POC)のhs-cTnアッセイも利用可能であるが、中央検査室を利用したhs-cTn検査と比して患者ケアを改善するかは明らかではない。
ノルウェーHaukeland University HospitalのThulinら(WESTCOR-POC)は、急性冠症候群が疑われる救急受診患者を、中央検査室またはPOCでの0/1時間プロトコルhs-cTn検査へと割り付け、救急滞在時間を比較するRCTを実施した(n=1,494)。
結論
救急外来の滞在時間は、POC群で174分、中央検査室群で180分であった。両者の差は6分で、事前に定められた臨床的意義のある最小差(MCMD)15分には満たなかった。
急性心筋梗塞の診断、死亡、緊急血行再建術の複合アウトカム率は、POC群11.4%、中央検査室群9.4%で有意差はなかった。
評価
POC検査は、中央検査室でのhs-cTn検査と比べて、救急滞在時間の短縮をもたらさなかった。
単施設研究であり、一般化可能性は慎重に判断する必要があるが、POCのhs-cTn検査が必ずしも診療時間を短縮するわけではない、という結果は意外であり、POC検査の意義に再考を迫るものである。


