ICUでの保守的酸素目標値、過去最大のRCTでも差なし:UK-ROX試験
Conservative Oxygen Therapy in Mechanically Ventilated Critically Ill Adult Patients: The UK-ROX Randomized Clinical Trial
背景
集中治療室(ICU)で治療を受ける重症患者では低酸素血症を避けるために酸素療法が一般的に行われてきたが、近年では一転して過剰酸素の有害性が指摘されるに至り、過剰と過少の間で最適な酸素投与量を確定するために数多くの臨床試験が実施されてきた。
イギリスUniversity of PlymouthのMartinら(UK-ROX)は、同国97のICUで酸素療法を受ける人工呼吸器装着患者を、保守的酸素療法(SpO2=90%を維持可能な最低の酸素濃度での投与)、または通常酸素療法(主治医の裁量による)へと割り付け、90日死亡率・その他のアウトカムを比較するRCTを実施した(n=16,500)。
結論
保守的酸素療法群の患者は、通常酸素療法と比して、酸素投与量が29.3%少なかった(100%投与換算で20.3時間 vs. 28.7時間)。
90日死亡率は保守的酸素療法群で35.4%、通常酸素療法で34.9%であった(リスク差 0.7パーセントポイント)。
ICU滞在期間、入院期間、臓器サポート不要な30日生存日数、他の時点での死亡率にも有意な群間差を認めなかった。
評価
全体として低い酸素化目標値での酸素投与は、対照群と比して有益でも有害でもなかった。ただ、主治医の裁量に任せられた本試験の対照群での酸素投与は、現場レベルで以前よりもより保守的なアプローチが選択されていることを示唆している。また、急性脳損傷とCOVID感染疑いの小規模なサブセットでは、保守的目標値が有益な可能性も残されている。
このテーマでは、日本を含む12ヵ国で40,000人の登録を予定するMega-ROX試験(ACTRN12620000391976)も2026年に終了を控えており、間も無く最終結論がもたらされるだろう。