アメリカのICU診療は過去10年でどのように変化したか
Use of Life Support and Outcomes Among Patients Admitted to Intensive Care Units
背景
新型コロナウイルスのパンデミックは集中治療領域の実践に大きなインパクトを残したと考えられるが、国家規模のデータは何を語るのか?
アメリカUniversity of PennsylvaniaのMoinらは、全米54の医療システムが参加するEpic Cosmosデータベースの、2014年から2023年のデータを用い、集中治療室(ICU)に入室した成人患者を対象とした後向研究を実施し、COVID-19パンデミックの前後におけるアメリカのICUの疫学を記述した。
結論
3,453,687件の入院が対象となった。患者の年齢は中央値65歳、55.3%が男性で、17.3%が黒人、6.1%がヒスパニック/ラテン系であった。
院内死亡率は全体で10.9%、パンデミック期間中にはCOVID陰性患者(調整オッズ比 1.3)、陽性患者(4.3)共に死亡率は上昇したが、2022年半ばまでにベースラインを回復した。ICU滞在期間は全体で中央値2.1日、パンデミック期間中にはCOVID陽性患者で有意に増加した(陰性患者との差 2.0日)。侵襲的人工呼吸器の使用率は、パンデミック以前には23.2%、パンデミック期間中には25.8%であったが、パンデミック後には22.0%とベースラインを下回った。これに対して、昇圧剤の使用率は7.2%から21.6%へと増加した。
評価
アメリカを代表する電子健康記録システムに基づく大規模データベースを利用し、パンデミックを挟んだ前後10年における集中治療実践の変化を跡付けた。
パンデミック期間を除いてICU患者の死亡率が低下傾向にないこと、パンデミックがCOVID感染の有無にかかわらず、患者の死亡率を増加させたことに加え、侵襲的人工呼吸器・昇圧剤などの実施率には10年間で有意な差が認められており、介入への考え方が変化していることを伺わせる。