Life's Essential 8の遵守は脳老化の遅延と関連する
Adherence to life’s essential 8 is associated with delayed white matter aging
背景
2022年にアメリカ心臓協会（AHA）は、心血管（CV）の健康と長寿のためにLife's Essential 8（LE8: 食習慣・身体活動・喫煙・BMI・血清脂質・血糖・血圧・睡眠）を導入したが、脳老化への影響や認知症の遺伝的危険因子APOE4との相互作用は不明である。
アメリカUniversity of MarylandのMaらは、UK Biobankデータを用い、LE8と白質脳老化（white matter brain ageing）の関係、APOE4のアレルによる緩和効果を横断的に解析した。LE8変数、拡散テンソル画像（DTI）データ、APOE4遺伝子情報のある白人18,817名を解析対象とした。DTIの局所的異方性比で白質脳年齢を予測し、予測脳年齢と実年齢の差を差し引き、白質脳年齢ギャップ（White Matter Brain Age Gap［WM BAG］）を算出した。
結論
LE8スコアが高いほどWM BAGが低く、脳老化の遅延が示唆された。この影響はAPOE4非保有者の方がより顕著であった（LE8の10ポイント増ごとに、非保有者で124日、保有者で84日脳が若返る）。一部の年齢層や性別群でAPOE4とLE8の相互作用の可能性が示唆されたが、有意性は境界域であった。
評価
LE8と白質脳老化遅延の関連を示唆した初めての研究で、健康的な生活習慣とより良い認知機能や脳構造との関連を示す先行研究（https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30369305/、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30415127/、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36794682/）を補強する。また、APOE4遺伝子とLE8の関連も新規で、同遺伝子キャリアではLE8の効果は減弱するものの、高LE8スコアは低いWM BAGと関連する、とした。横断デザインや白人偏重等の限定があり、縦断デザインと対象集団の多様化への展開が必要である。
