術前薬物療法でpCRとなった乳がんで手術は不要か?
Selective Elimination of Breast Surgery for Invasive Breast Cancer: A Nonrandomized Clinical Trial
背景
近年の治療の進歩により、乳がんの術前薬物療法では多くの症例で病理学的完全奏効(pCR)が達成されるようになり、これらの患者での手術の必要性が議論されるに至っている。
アメリカUniversity of Texas MD Anderson Cancer CenterのKuererらは、同国7施設の、ERBB2陽性(HER2陽性)またはトリプルネガティブcT1-2N0-1M0浸潤性乳がん患者(n=50)のうち、術前薬物療法後の画像ガイド下吸引式生検でリンパ節陰性かつ乳房内残存がんを認めなかった患者に対し、ブースト照射+全乳房照射のみを行い、5年同側乳房再発率を評価する非ランダム化臨床試験を実施した。
結論
58%がERBB2陽性乳がん、42%がトリプルネガティブ乳がんであった。
吸引式生検では62%にあたる31名で乳房内pCRが認められ、乳房内pCRで標的腋窩郭清を受けた患者全員(8名)で腋窩pCRが認められた。
追跡期間55.4ヵ月(中央値)で、同側乳房再発率は0%、無病生存率・全生存率は100%であった。
評価
術前薬物療法でpCRとなった患者では、放射線治療のみで手術を省略しても長期間にわたって再発は生じなかった。
乳がんの治療では長年にわたり外科的切除を最小化する努力が続けられてきたが、本研究の有望結果は、非外科的パラダイムの次なる大きな一歩となりうる。