加齢に伴うクローン性造血はがん死亡リスクと関連か
Tumor-Infiltrating Clonal Hematopoiesis
背景
クローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential; CHIP)は、加齢に伴い一般的にみられる、体細胞変異を起こした血液細胞がクローン性に増殖する病態で、血液悪性腫瘍や心血管疾患・慢性炎症疾患リスクの上昇と関連する。また、腫瘍において高い変異アレル頻度のCHIP変異が認められることがあり、腫瘍浸潤クローン性造血(TI-CH)と呼ばれている。
イギリスFrancis Crick InstituteのPichらは、早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたTRACERx研究の421名、がん種横断コホートMSK-IMPACTの49,351名の血液サンプルにおいて、CHIP・TI-CHの有病率および生存・再発アウトカムとの関連を検証した。
結論
CHIPを伴うNSCLC患者のうち、42%でTI-CHが認められた。TI-CHは、CHIPを伴わない場合と比較してハザード比 1.80、CHIPを伴うがTI-CHでない場合と比較して1.62で、死亡・再発リスクを増加させた。
固形腫瘍患者では、CHIPを伴う患者のうち26%がTI-CHを有した。TI-CHは、TI-CHでない場合と比較して全原因死亡リスクを1.17倍上昇された。
TET2の変異はTI-CHの頻度を最も強力に予測しており、さらに肺腫瘍細胞への単球遊走を促し、腫瘍微小環境での骨髄細胞の浸潤と関連し、腫瘍オルガノイドの増殖を促進した。
評価
高齢者では10〜20%にみられるCHIPだが、CHIPを伴うがん患者ではTI-CHが高頻度で認められ、死亡リスクと関連した。
大規模なデータセットによって造血機能の老化と腫瘍発症・増殖との相互作用が裏付けられたことで、新たな予防・介入アプローチに道を開く知見となりうる。