外傷性心停止での蘇生的開胸術、心タンポナーデが原因の場合一定の効果
Prehospital Resuscitative Thoracotomy for Traumatic Cardiac Arrest

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Surgery
年月
February 2025
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背景

外傷性心停止は、出血や心タンポナーデなど可逆的原因によって発生するケースが多いが、病院前での蘇生的開胸術は外傷性心停止のアウトカム改善に寄与しているのか。
イギリスLondon's Air AmbulanceのPerkinsらは、1999年から2019年にロンドンで施行されたすべての病院前蘇生的開胸術を後向に分析し、蘇生的開胸術を受けた心停止患者の病因および生存退院アウトカムとの関連を調査した。

結論

601名の院外外傷性心停止患者が、病院前で蘇生的開胸術を受けた。
患者の年齢は中央値25歳、男性が89.5%で、88.0%が穿通性外傷によるものであった。心停止は緊急通報から中央値12分後に発生し、81.7%は高度外傷チームの到着(中央値20分)前に発生していた。心停止の原因は17.5%が心タンポナーデ、69.6%が失血、12.0%が失血と心タンポナーデの複合であった。
生存退院率は5.0%(30名)で、うち76.6%(23名)が神経学的良好アウトカムであった。生存退院率は心停止の原因によって異なっており、心タンポナーデ例では21%、失血例では1.9%、複合例では0%であった。心タンポナーデによる心停止の場合、15分以上持続すると生存者なし、失血による心停止では5分以上で生存者なしとなった。
多変量解析では、心タンポナーデによる心停止(オッズ比 21.1)、心停止時間の短さ(20.9)、開胸心マッサージが実施不要(0.2)の各因子が生存と関連した。

評価

ロンドン航空救急での調査から、心タンポナーデが原因の症例や直ちに開胸術が実施された症例では、蘇生的開胸術が生存率に寄与しうることを示した。
経験ある医師主導チームによる速やかな介入が可能なシステムは稀であろうが、外傷性心停止に対する有望な病院前介入の一つと考えられる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)