SGLT2阻害薬間に差はあるのか
Comparative Effectiveness of Individual Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors
背景
SGLT2阻害薬の心血管への有効性・安全性には、薬剤間に若干の相違のあることが示唆されている。
アメリカBrigham and Women’s HospitalのShinらは、2型糖尿病(T2D)成人患者を対象に、2014〜2020年の3つの米国医療保険請求データベースを用いて、カナグリフロジン(232,890名)とダパグリフロジン(129,881名)をエンパグリフロジン(295,043名)と比較した。追跡期間は最大8年であった。
結論
エンパグリフロジンと比較して、カナグリフロジンまたはダパグリフロジンは、ベースラインでDM関連の症状またはCVDの病歴がある可能性が低かった。
心筋梗塞(MI)/脳卒中リスクについては、カナグリフロジンとダパグリフロジンはエンパグリフロジンと同等であったが、ダパグリフロジンは、心不全(HF)入院リスクの増加と関連しており(HR 1.19)、5 mg用量でリスクが上昇した(HR 1.30)。
これらの知見は、CVD歴のサブグループ間で一貫していた。安全性イベントについては、エンパグリフロジンと比較して、カナグリフロジンまたはダパグリフロジンは性器感染症のリスクが低かった(HR 0.94)が、重度の尿路感染症(UTI)のリスクは高かった(HR 1.13)。ダパグリフロジン使用患者は性器感染症(HR 0.92)および糖尿病性ケトアシドーシスDKA(HR 0.78)のリスクが低かった。
評価
複数のSGLT2阻害薬に関する21件のRCTを対象とした2024年のメタアナリシスは、全死因死亡率・CVD死亡率・HF入院・DM進行リスクに薬剤間差はない、としていた(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38293914/)。
直接比較RCTのない中で行われた最大の観察研究だったが、結論的には、いずれかの薬を特に選好させる重大な差異はない、ということになろう。