世界の糖尿病:NCD-RisC最新ランドマーク報告
Worldwide trends in diabetes prevalence and treatment from 1990 to 2022: a pooled analysis of 1108 population-representative studies with 141 million participants
背景
世界の糖尿病(DM)有病率と治療の現況は。
イギリスImperial College LondonのEzzatiら(NCD Risk Factor Collaboration: NCD-RisC)は、1億4,100万人が参加した1,108件の集団ベース研究データに基づき、世界200の国・地域の18歳以上の参加者における、1990〜2022年のDM有病率と治療の傾向を推定した。
結論
2022年には世界で推定8億2,800万人がDMを有し、1990年より6億3,000万人増加した。1990〜2022年に、年齢調整DM有病率は、女性では131ヵ国、男性では15ヵ国で増加し、事後確率は0.80を超えた。増加率が最も高かったのは、東南アジア(マレーシア等)、南アジア(パキスタン等)、中東・北アフリカ(エジプト等)、ラテンアメリカ・カリブ海諸国(ジャマイカ・トリニダード-トバゴ・コスタリカ等)の低〜中所得国であった。年齢調整有病率は、西ヨーロッパ・中央ヨーロッパ・サハラ以南アフリカ・東アジア・太平洋・カナダ、および1990年にすでに有病率が高かった一部の太平洋島嶼国では、増加も減少もせず、事後確率は0.80を超えた。
2022年に世界で最も有病率が低かったのは、男女とも西ヨーロッパと東アフリカ、女性では日本とカナダであった。2022年に世界で最も有病率が高かったのは、ポリネシアとミクロネシアの国々、カリブ海諸国と中東と北アフリカの一部、パキスタンとマレーシアであった。
2022年には、30歳以上のDM成人の59%が治療を受けておらず、1990年から3.5倍増加している。1990〜2022年に、女性では118ヵ国、男性では98ヵ国でDM治療率が上昇し、事後確率は0.80を超えた。治療率の最大の改善は、中央・西ヨーロッパ、ラテンアメリカ(メキシコ・コロンビア・チリ・コスタリカ)、カナダ、韓国、ロシア、セーシェル、ヨルダンの一部の国でみられた。サハラ以南アフリカ、カリブ海諸国、太平洋諸島国、南アジア、東南アジア、中央アジアでは治療率の上昇はなかった。
2022年には、年齢調整治療率はサハラ以南のアフリカと南アジアの国々で最も低く、アフリカの一部の国々では治療率が10%未満であった。治療率は、韓国、高所得西側諸国、中央・東ヨーロッパ(ポーランド・チェコ・ロシア等)、ラテンアメリカ(コスタリカ・チリ・メキシコ等)、中東および北アフリカ(ヨルダン・カタール・クウェート等)の一部の国々では55%以上であった。
評価
Charles Herbert Bestとともに、インスリンを発見したFrederick Grant Bantingの誕生日にあたる11月14日に開催された世界糖尿病デー(WDD)に合わせて報告された、現時点で広く参照されるべき、高信頼度のランドマーク統合研究である。
T1DとT2Dの区別が明示されていないが、これまでの報告から、後者である。低〜中所得国で有病率が増加した一方、日本は、スペイン・フランス・スイス・台湾等とともに1990〜2022年で変化なしか、減少傾向にあり、「T2D優良国」となっている。


