肥満HFpEF患者にはチルゼパチド:SUMMIT
Tirzepatide for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction and Obesity
背景
肥満の駆出率維持心不全(HFpEF)患者への二重GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの効果は。
アメリカBaylor UniversityのPackerら(SUMMIT)は、HFpEF(駆出率>50%)でBMI>30の患者731名を対象として、これを検証するRCTを行った(対照:プラセボ, 52週間)。一次エンドポイントは、心血管因死亡または心不全の増悪(WHF)イベント、ベースラインから52週までのKCCQ-CSSの変化の複合であった(追跡期間中央値 104週間)。
結論
チルゼパタイドの一次エンドポイント効果を認めた。心血管系死亡またはWHFイベントは、チルゼパタイド群の9.9%とプラセボ群の15.3%で発生した(HR 0.62)。WHFは、チルゼパタイド群の8.0%、プラセボ群の14.2%に発生し(0.54)、心血管因死亡は各2.2%と1.4%であった(1.58)。52週時点でのKCCQ-CSSの平均変化は、チルゼパタイド群で19.5、プラセボ群で12.7であった。治験薬の投与中止に至った有害事象(主に胃腸系)は、チルゼパチド群の6.3%、プラセボ群の1.4%に発生した。
評価
2023におけるセマグルチドの類似効果の報告(STEP-HFpEF・STEP-HF DM)に続き、抗肥満薬のHFpEFへの有益性を確認した。著者らは、SUMMITのCMRサブスタディにおいて、チルゼパタイドが心臓の構造/機能に実質的変容をもたらすことも確認している(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39566869/)。
肥満・T2DはHFpEFの主因であり、これら抗肥満薬は、HFpEF治療のパラダイムを変えつつある。