急性脳損傷でリベラルな輸血トリガー値のベネフィットを実証:TRAIN試験
Restrictive vs Liberal Transfusion Strategy in Patients With Acute Brain Injury: The TRAIN Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
November 2024
332
開始ページ
1623

背景

近年の複数のランダム化比較試験は、重傷患者で高いヘモグロビンレベルを維持することのメリットを疑問視してきた。一方、外傷性脳損傷(TBI)患者では、今年に発表されたHEMOTION試験において、リベラル輸血(10 g/dL)がいくつかの二次アウトカムを改善する可能性を示唆した(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2404360)。
ベルギーUniversite Libre de BruxellesのTacconeらは、22ヵ国72ヵ所の集中治療室で、ヘモグロビン値が9 g/dLを下回った受傷後10日以内の外傷性脳損傷・動脈瘤性くも膜下出血・脳内出血患者を登録し、9 g/dL以下をトリガーとするリベラル輸血、または7 g/dLをトリガーとする制限輸血を比較する、第3相実用的ランダム化臨床試験、TRAIN試験を実施した(n=820)。

結論

リベラル輸血群では中央値2単位、制限輸血群では中央値0単位の輸血が実施された(絶対平均差 1.0単位)。
ランダム化後180日時点での神経学的不良アウトカム(Glasgow Outcome Scale Extended [GOS-E]スコア1から5)率は、リベラル輸血群62.6%、制限輸血群72.6%であった(調整相対リスク 0.86)。リベラル輸血の効果は、事前指定されたサブグループで一貫して認められた。
脳虚血イベントはリベラル輸血群の8.8%、制限輸血群の13.5%で生じた(相対リスク 0.65)。

評価

HEMOTION試験は一次アウトカムに有意差なく、二次アウトカムの改善に留まったが、このTRAIN試験は、リベラル輸血で不良アウトカムが抑制されることを実証した。
動脈瘤性くも膜下出血を対象とするSAHaRA試験(NCT03309579)もすでに完了しており、さらなる知見の積み上げがもたらされるだろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)