「男らしさ」が心血管系疾患の発見を妨げる?
Male Gender Expressivity and Diagnosis and Treatment of Cardiovascular Disease Risks in Men
背景
伝統的な「男らしさ Masculinity」が、無条件で称賛されるべき徳と見做されなくなって久しいが、医療分野において男性的な規範とジェンダー表出への固執は何をもたらすのか?
オーストラリアUniversity of MelbourneのLeongらは、National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Healthの第I・第IV・第Vウェーブの参加者データ(n=4,230)を分析し、思春期・若年青年期における男性性の表現度(male gender expressivity; 「男らしさ」を同性の仲間へ伝えようとする社会文化的圧力を示す)と心血管(CVD)の診断・治療との関連を検討した。
結論
含まれた参加者の64%は非ヒスパニック系白人で、80%が民間保険加入者であった。
若年成人期の時点でMGEが高かった参加者は、平均以下であった参加者と比較して、高血圧(22% vs. 26%)、糖尿病(5% vs. 8%)、高脂血症(19% vs. 24%)の診断が少なく、糖尿病治療の報告も少なかった(3% vs. 5%)。
思春期のMGEが1 SD(標準偏差)上昇するごとに、高血圧の治療を受ける確率が11%、糖尿病の治療を受ける確率は15%低下した。また、若年成人期のMGEが1 SD上昇するごとに、高血圧の診断を受ける確率が4%、治療を受ける確率は7%、糖尿病治療を受ける確率は10%低下した。
MGEと高脂血症の診断・治療には関連が認められなかった。
評価
AYA期のMGEの高さは、CVDリスク指標(血圧・HbA1cなど)と関連しないにも関わらず、高血圧・糖尿病の診断・治療を受ける確率の低下と関連した。
いわゆる「有害な男らしさ Toxic Masculinity」規範の中でも、自立性と強さの要求、あるいは感情・弱さを表出することを忌避させる圧力は、症状の現れやケアを求める行動を阻害することで、男性自身の健康を損なっている可能性がある。


