女性や黒人の心停止患者ではバイスタンダーCPRの効果が小さい?:アメリカ調査
Race and Sex Differences in the Association of Bystander CPR for Cardiac Arrest
背景
院外心停止(OHCA)からの生存には市民救助者による心肺蘇生(バイスタンダーCPR)が重要となるが、女性や特定の人種の患者ではバイスタンダーCPRの実施率が低い可能性が指摘されている。
アメリカSaint Luke's Mid America Heart InstituteのChanらは、同国の多施設OHCAレジストリ、CARES(Cardiac Arrest Registry to Enhance Survival)に登録された2013〜2022年の非外傷性OHCA症例623,342件において、バイスタンダーCPRと生存アウトカムの関連に患者の性別および人種/民族が影響を及ぼしているかを検討した。
結論
35.9%が女性であった。49.8%が非ヒスパニック系白人、20.6%が黒人、7.3%がヒスパニック、2.9%がアジア系、0.4がネイティブアメリカンであった。全体で9.3%にあたる58,098名が退院まで生存した。
バイスタンダーCPRは、おのおのの人種/民族グループで高い生存率と関連した一方で、生存率との関連は白人(調整オッズ比 1.33)、ネイティブアメリカン(1.40)で最も高く、黒人では低かった(1.09)。同様に、バイスタンダーCPRは男女ともに高い生存率と関連した一方で、関連は女性(1.15)よりも男性(1.35)でより強かった。
黒人グループおよび女性でみられた弱い関連は、OHCA発生地域の人種/民族、収入にかかわらず、認められた。
神経学的良好生存についても同様の結果が得られた。
評価
黒人住民の多い地域や女性のOHCA患者ではバイスタンダーCPR実施率が低いという報告はなされているが、本研究は、バイスタンダーCPRが実施された場合でも、黒人・女性では生存率への効果が低いことを明らかにした。
患者属性によるアウトカム格差は、これまで考えられていたよりも複雑な原因によっている可能性があり、解明が急がれる。


