重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬のエビデンスは不確実:メタ解析
Antivirals for treatment of severe influenza: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials
背景
重症インフルエンザ患者の治療においては、ノイラミニダーゼ阻害剤などの抗ウイルス薬が推奨されているが、死亡アウトカムへの効果は実証されておらず、最良の抗ウイルス薬も不明である。
カナダLanzhou UniversityのGaoらは、世界保健機関の臨床ガイドラインの更新に合わせて、重症インフルエンザ治療における抗ウイルス薬の有効性・安全性を評価するため、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。
対象となったのは、インフルエンザ疑いまたは確定の入院患者を登録し、抗ウイルス薬をプラセボ/標準治療/別の抗ウイルス薬と比較したランダム化比較試験であった。
結論
8件のRCT(n=1424)がレビューに含まれ、うち6件がネットワークメタアナリシスの対象となった。
季節性インフルエンザ・人獣共通インフルエンザによる死亡率について、オセルタミビル・ペラミビル・ザナミビルの低下は確実性が非常に低かった。季節性インフルエンザの入院期間については、オセルタミビル(平均差−1.63日)、ペラミビル(−1.73日)で、プラセボ/標準治療と比して短縮されたという確実性の低いエビデンスが認められた。症状緩和までの期間にはほとんど差がなかった。
有害事象・重篤有害事象についてはオセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルで差はなかった(非常に低い確実性)。
含まれた試験が少なく、出版バイアスの検定は行えなかった。
評価
同じくWHOの資金提供で行われた、ウイルス曝露後の予防投与に関する系統的レビュー・メタ解析(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01357-6)とともに、Lancet誌に発表された。
本メタ解析は、重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬のRCTデータが貧弱で、入院期間の短縮についての確実性の低いエビデンスしか得られていない現状を明らかにした。


