HFmrEF/HFpEFへのフィネレノンの有益性を示す:FINEARTS-HF
Finerenone in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction
背景
駆出率が保持された心不全(HFpEF)、または軽度低下した心不全(HFmrEF)患者に対する非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の有効性は。
アメリカBrigham and Women’s HospitalのSolomonら(FINEARTS-HF)は、37ヵ国において、HFmrEFまたはHFpEF(≧40%)で症候性心不全かつNT-ProBNP高値の患者6,001名(36%がEF<50%)を対象として、標準治療へのフィネレノン併用の効果・安全性を検証する第3相RCTを行った(対照:プラセボ, 追跡期間中央値32ヵ月)。
一次エンドポイントは、心不全増悪と心血管死の複合である。
結論
一次エンドポイント発生はフィネレノン群で低かった(率比 0.84)。心不全増悪の発生はフィネレノン群で低かった(0.82)が、心血管死の差は有意でなかった。フィネレノンは、高カリウム血症のリスク増加(9.7% vs. 4.2%)と低カリウム血症のリスク低下に関連した。
評価
既に2型糖尿病(T2D)および慢性腎臓病(CKD)における腎および心血管保護適応でFDA承認を受けているBayer薬である。
HFpEF治療におけるMRAは、スピロノラクトンの効果を検討したRCTであるTOPCAT(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24716680/)以来議論となっており、JCS/JHFSのHFガイドラインでは、スピロノラクトンがHFpEFに対してクラス2a推奨となっている(https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000001063)。
このFINEARTS-HFは、HFmrEF/HFpEFにおけるMRAのメリットを明示し、フィネレノンの適応拡張を確実なものにしたが、同薬はスピロノラクトンより相当高価で、費用効果は問題である。