ガザの病院では何が起こっているのか?:ナセル病院での外傷ケースシリーズ
Trauma care supported through a global telemedicine initiative during the 2023-24 military assault on the Gaza Strip, occupied Palestinian territory: a case series
背景
2023年10月7日のハマスの攻撃をきっかけとして、パレスチナのガザ地区はイスラエルによる未曾有の大規模軍事攻撃に晒されている。医療施設も攻撃対象となっており、医療支援の継続は日に日に困難となっている。
パレスチナ自治区ガザ地区Nasser HospitalのAlserらは、ガザ南部にある同施設の外科チームが国際的遠隔医療グループで共有した外傷症例のケースシリーズを報告した。遠隔医療グループはメタ社のスマートフォン用アプリ、WhatsApp上で組織され、SNSを用いたアウトリーチにより、1,000人以上のメンバーが参加していた。
結論
2024年1月28日から2月12日に入院した数百名の患者から、12例が報告された。
12例のうち4例が女性で、4例が小児であった。11例は穿通性損傷、6例は破片による二次的創傷、5名が銃撃による創傷を呈した。損傷部位は頭頸部4例、腹部4例、胸部3例、骨盤2例、四肢1例であった。
12名のうち11名は追跡不能となり、イスラエル軍による病院攻撃の影響により、病院は機能を停止した。
評価
スマホアプリを用いた遠隔医療は、劣悪なリソース下で医療チームの能力向上に貢献したと考えられたが、破局的状況に対応可能であったとは言い難い。
本論文の筆頭著者、K. Alser医師は、イスラエル軍による3月の同病院への攻撃時に拘束され、現在も所在不明となっている。