セマグルチドは肥満患者の心不全リスクを軽減する:SELECT二次解析
Semaglutide and cardiovascular outcomes in patients with obesity and prevalent heart failure: a prespecified analysis of the SELECT trial
背景
GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、過体重・肥満患者の主要心血管イベント(MACE)リスクを軽減するが、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)および心不全(HF)のリスクは。
イギリスUniversity College LondonのDeanfieldらは、SELECT試験の事前規定分析により、これを検証した。対象患者は、BMI 27以上で、心血管疾患の既往がある45歳以上の成人17,604名である(対照:プラセボ)。
エンドポイントは、MACE(非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死の複合)、複合HFエンドポイント(心血管死・HF入院・HF緊急受診)、心血管死、および全死因死亡である。
結論
登録時にHFのあった患者4,286名中、53%がHFpEF、31.4%がHFrEF、15.5%が詳細不明のHFであった。HFと非HFで、ベースライン特性は同様だったが、HF患者の方が臨床イベントの発生率が高かった。
セマグルチド治療により、HF患者は非HF患者と比較してMACEのリスクが28%低下し、複合HFエンドポイントリスクが21%低下した。心血管死のみのリスクは24%低下し、全死因死亡のリスクは19%低下した。
セマグルチド治療により、HFrEF患者のMACEのリスクが35%低下し、HFpEF患者では31%低下し、両タイプに有効であることが示されたが、HFrEF患者はHFpEF患者よりも絶対リスクが高かった。複合HFエンドポイントのリスクは、HFrEFで21%、HFpEFで25%低下した。
評価
昨年NEJM発表のSELECT主要結果(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2307563)、と一致し、特にHFrEF/HFpEFのタイプ差に関わらないHFリスク低減効果を確立する重要なエビデンスである。