統合マルチオミクスでPAHにおけるアスポリンの保護的役割を示す
Integrative Multiomics in the Lung Reveals a Protective Role of Asporin in Pulmonary Arterial Hypertension

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Circulation
年月
August 2024
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背景

統合マルチオミクスによる肺動脈性高血圧症(PAH)の病態解析は、患者サンプルの入手困難性により進展していない。
アメリカUniversity of CaliforniaのHongらは、現在利用可能な最大の多施設PAH肺バイオバンクから採取したPAH患者96名と非PAH対照者52名の肺サンプルを対象として、トランスクリプトームプロファイリング・ディープフェノタイピング等表現型解析を行い、このデータを、臨床病理データ・ゲノムワイド関連研究・ベイズ制御ネットワーク・単一細胞トランスクリプトミクス・薬物トランスクリプトミクスと統合した。

結論

血管細胞に関連する可能性のある保護的遺伝子ネットワークを2モジュール特定した。さらにアスポリンをコードするASPNが、PAHへの代償反応としてアップレギュレーションされる重要なハブ遺伝子であることが示された。アスポリンは複数の独立したPAHコホートの肺と血漿でアップレギュレーションされており、PAHの重症度と関連していた。アスポリンは、PAH肺の肺動脈平滑筋細胞の増殖と形質転換成長因子β/リン酸化SMAD2/3シグナル伝達を阻害した。SUGEN/低酸素ラットにおいて、ASPNノックダウンはPAHを悪化させ、組み換えアスポリンはPAHを軽減した。

評価

アスポリンは細胞外マトリクスタンパクであり、心筋リモデリングに関与することが報告されている(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35470068/)。PAHとの関連の報告は初であり、疾患プロセスへの代償応答としてアップレギュレートされ、肺動脈平滑筋細胞の増殖とPAH関連シグナル伝達経路を阻害することが示された。
組み換えアスポリン治療の概念が実証されており、臨床利用の可能性もみえてきている。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)