コロナパンデミックで心筋梗塞による入院が減ったのは何故?
Factors Underlying Reduced Hospitalizations for Myocardial Infarction During the COVID-19 Pandemic
背景
COVID-19パンデミック初期には、諸外国で急性心筋梗塞(AMI)による入院数が急速に減少した。これは感染リスクの高い病院受診が忌避されたことによるのか(「受診控え」)、あるいはAMIリスクのある個人が先にCOVID-19に感染し死亡したことによるのか?
アメリカHarvard Medical SchoolのWilcockらは、2016年から2023年6月までの従来型メディケアの患者請求データ(n=31,623,928)を用い、COVID-19パンデミック中のAMIによる病院受診数を算出し、受診数の変化要因を検討した。
結論
2023年6月には患者100人あたり0.044件のAMI受診があり、これは2019年6月(0.055件)よりも20%低かった。
パンデミック初期のAMI受診割合は、COVID-19の死亡率と逆相関し、他の急性疼痛疾患と相関していたことから、「受診控え」によるものと示唆された。パンデミックによる過剰死亡の変化は、AMI受診の減少をほとんど説明しなかった。
一方で、パンデミック後期には、AMI発症率の長期にわたる減少傾向が受診の減少を説明した可能性があった。2020年3月から2023年6月にかけて、AMI受診は予想よりも5%減少したと推定された。
評価
パンデミック初期のAMI受診の減少は、大方の予想通り「受診控え」によるものと推定され、COVID-19による死亡増がAMI発症を減らしたという証拠は認められなかった。
一方、AMI受診はパンデミック後期にも持続的に減少しており、これはAMI発症そのものが減少した可能性を示唆している。