大血管手術前には冠動脈疾患の有無を確認すべき:観察研究
Diagnosis and treatment of ischemia-producing coronary stenoses improves 5-year survival of patients undergoing major vascular surgery

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Journal of Vascular Surgery
年月
July 2024
80
開始ページ
240

背景

現在のガイドラインでは、血管外科手術を受ける患者は、無症状の場合は冠動脈疾患(CAD)の診断・治療を推奨されていない。
ラトビアUniversity of LatviaのKrievinsらは、選択的血管手術(主に下肢・頸動脈)を予定しているCAD無既往患者522名を対象に、術前CTCAとFFR CT解析に、術後の虚血標的冠動脈血行再建術を組み合わせることで、有害事象と長期生存率の改善が可能かを検討する単施設観察研究を実施した(対照:通常ケア)。割り付けはCTの利用可能性によって決定し、無作為化はされなかった。FFR CT解析は、血管手術後の冠動脈血行再建術の判断ベースとして用いられた。両群で最適薬物療法(BMT)が行われた。
エンドポイントは、5年間の追跡期間中の全死亡・心血管死・心筋梗塞(MI)・主要心血管イベント(MACE[死亡・MI・脳卒中])である。

結論

FFR CT群では、患者の65%に無症候性の病変特異的冠動脈虚血があり、患者の52%に重度の虚血、36%に多枝虚血、8%に左主幹部虚血があった。30日死亡率に差はなかった。虚血性FFR CT所見を示した患者の約半数が術後1〜3ヵ月で選択的冠動脈血行再建術を受けたが、通常ケア群では行わなかった。5年時点で、通常ケア群と比較して、FFR CT群で心血管死亡率(4% vs. 21%)、MI(4% vs. 24%)、MACE(20% vs. 47%)が減少した。
5年生存率はFFR CTでは84%であったのに対し、通常ケアでは64%であった。

評価

現在のガイドラインはCAG時代のものであり、見直しが当然要求される。良い観察研究によって、ガイドラインを見直すべきではないか、という仮説を生成した。RCTが正当化される。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)