心血管イベントリスク予測のための新しい計算式AHA PREVENT採用の帰結は
Projected Changes in Statin and Antihypertensive Therapy Eligibility With the AHA PREVENT Cardiovascular Risk Equations
背景
2023年11月、アメリカ心臓協会(AHA)は、過去10〜20年間の人口変動と心血管疾患(CVD)の傾向の変化を反映した最近のデータを使用して開発されたリスク予測式PREVENTを発表した。
アメリカHarvard Medical SchoolのDiaoらは、2011〜2020年に実施された同国の国民健康栄養調査の参加者中、心筋梗塞や脳卒中の既往のない成人7,765名(年齢範囲30〜79歳)の代表的サンプルデータを使用して、PREVENTと2013 ACC/AHA予測式を比較した。一次アウトカムは、10年間のASCVDリスクの予測、ACC/AHAリスク分類、降圧薬・スタチン使用の適格性、心筋梗塞または脳卒中の予測発生率の違いである。
結論
PREVENTの使用により、アメリカ成人の53.0%が2013 ACC/AHAリスク分類のより低いリスクカテゴリーに再分類され、アメリカ成人の0.41%がより高いリスクカテゴリーに再分類されると推定された。予防治療を受けている、または推奨されているアメリカ成人の数は、スタチン療法で約1,430万人、降圧療法で約262万人減少する、とみられる。ただし、治療適格性の減少により、10年間で心筋梗塞や脳卒中の発症が10.7万人増加する可能性があると推定される。適格性変更の影響を受けるのは、男性が女性の2倍で、黒人成人が白人成人より多い。
評価
治療方針の決定を左右する重大なリスク予測式の改定の是非を左右する基礎データである。JAMA Editorial(https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2821628)は、ACC/AHA ガイドラインがPREVENTの方向に更新されるまでは、2013 ACC/AHAの使用が引き続き標準的な方法であるべきとしており、また JAMA Viewpoint(https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2821542)は、さらに、PREVENTの採用を支持しつつ、スタチン療法の10年間のリスク閾値を「3%から5%」に引き下げるべきと示唆している。