心血管高リスクの高血圧患者の降圧目標は140mmHg未満か120mmHg未満か:中国ESPRIT
Lowering systolic blood pressure to less than 120 mm Hg versus less than 140 mm Hg in patients with high cardiovascular risk with and without diabetes or previous stroke: an open-label, blinded-outcome, randomised trial
背景
糖尿病(DM)患者や脳卒既往患者の適切な降圧目標は。
中国Fuwai HospitalのLiら(ESPRIT)は、中国116施設の50歳以上の心血管高リスク患者11,255名(DM患者4,359名、脳卒中既往患者3,022名)を対象に、SBP目標値(3回の自動測定の平均)120mmHg未満(強化治療群)と140mmHg未満(標準治療群)を比較するRCTを行った。一次アウトカムは、心筋梗塞・血行再建術・心不全入院・脳卒中・心血管疾患死の複合である。
結論
中央値3.4年の追跡期間中、強化治療群・標準治療群の平均SBPは、各119mmHg・135mmHgであった。強化治療の一次アウトカム優位を認めた(9.7% vs. 11.1%)。DM・脳卒中既往の有無で結果は同等であった。複合アウトカム1件と心血管疾患死1件を予防するための3年間要治療患者数は、各75名・148名であった。失神は強化治療群でより頻繁に発生した(0.4% vs. 0.1%)が、低血圧・電解質異常・傷害を伴う転倒・急性腎障害に群間差はなかった。
評価
このESPRITにおける絶対リスクの減少は、2015年のSPRINT(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26551272)と同様で、DM・脳卒中既往に関係なく患者に利益をもたらした。ただし、DM・脳卒中既往患者を対象としたACCORD(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20228401/)・SPS3(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23726159/)・RESPECT(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31355878/)とESPRITとの間には差異があり、中国人のみを対象としたこの研究は、欧米状況には一般化できない可能性がある。日本での大規模検証が望まれる。