外傷性脳損傷患者での輸血はリベラルな閾値の方がよいか:HEMOTION
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Patients with Traumatic Brain Injury
背景
近年のRCTは、重傷患者で高Hb値を維持することのメリットを疑問視してきた。ただし、外傷性脳損傷(TBI)患者で制限的輸血とリベラル輸血のどちらが優るのかは未詳であった。
カナダQuebec-Universite LavalのTurgeonら(HEMOTION)は、世界34外傷センターで、集中治療室への入室時に中等度以上のTBI(GCSスコアが3-12)でHb値が10 g/dL以下の患者に対し、7 g/dLをトリガーとする制限的輸血戦略、または10 g/dLのリベラル輸血戦略を割り付けるRCTを実施した(n=742)。
結論
集中治療室内でのHb中央値は、制限的輸血群で8.8 g/dL、リベラル輸血群で10.8 g/dLであった。
拡張グラスゴー・アウトカム・スケール(GOS-E)で定義される6ヵ月後の不良アウトカム率(一次アウトカム)は、制限的輸血群68.4%、リベラル輸血群73.5%であった。
機能的自立度とQOLを評価する3つの二次アウトカムでは、リベラル輸血群での有意な改善がみられた。
輸血戦略と、死亡ないし抑うつとの関連は認められなかった。静脈血栓塞栓症は両群とも8.4%の患者に発生し、急性呼吸窮迫症候群は制限的輸血群の3.3%、リベラル輸血群の0.8%で発生した。
評価
制限的輸血とリベラル輸血は、一次アウトカムの有意差をもたらさなかった。ただし、機能的自立度とQOLに関する二次アウトカムはリベラル輸血を支持しており、両戦略がまったく同等であるかは未だ明らかではない。
頭部外傷・出血への輸血閾値問題では、他にもTRAIN試験(NCT02968654)やSAHaRA試験(NCT03309579)が行われている。