CAR-T療法後の二次がんは稀:スタンフォード調査
Risk of Second Tumors and T-Cell Lymphoma after CAR T-Cell Therapy
背景
キメラ抗原受容体T細胞(CAR T)療法は、さまざまなタイプの血液がん患者で有効性を示しているが、毒性についての懸念は根強い。特に、ウイルスベクターによる白血病・リンパ腫の発症リスクは、大きな懸念として残されている。
アメリカStanford UniversityのHamiltonらは、同施設で2016年以降に実施されてきた養子細胞療法を受けた患者(n=724)を対象に二次腫瘍の発症を調査し、CAR T細胞療法から54日後にエプスタイン・バーウイルス陽性(EBV+)T細胞リンパ腫と診断された1例について、分子プロファイリングの結果を報告した。
結論
中央値15ヵ月のフォローアップで、25件の二次腫瘍が特定された。うち11件は固形腫瘍で、血液腫瘍は14件であった。血液腫瘍のうち13件は骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病に関連し、axicabtagene ciloleucel投与を行ったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者1名でEBV+ T細胞リンパ腫が発症した。
このT細胞リンパ腫は元のDLBCLと分子的に異なっており、レトロウイルスベクターが寄与した証拠は認められなかった。ただし、両者はともにEBV+で、DNMT3A・TET2変異を共有しており、共通する既存のクローン性造血からの腫瘍形成が示唆された。
評価
CAR-T療法後の二次発がんは稀で、1件のみ認められたT細胞リンパ腫でも懸念されていたベクター組み込みの証拠は認められなかった。CAR-T療法の安全性を示唆する知見であるが、クローン性造血変異のスクリーニングは検討される価値がある。