がんの臨床試験への参加は生存ベネフィットを有するか?:メタ解析
Survival Benefit Associated With Participation in Clinical Trials of Anticancer Drugs: A Systematic Review and Meta-analysis
背景
臨床試験への患者の参加は、最新の治療へのアクセスと同時に綿密なモニタリングをもたらし、ひいては臨床アウトカムを改善すると信じられているが、"trial effect"として知られるこの現象は、堅固なエビデンスに支持されているわけではない。
カナダMcGill UniversityのIskanderらは、2000年1月〜2022年8月に発表された研究から、がん領域の臨床試験への参加が、ルーチンケアと比して全生存アウトカムを改善するかを検証するシステマティックレビュー・メタアナリシスを実施した。
結論
39報の研究から、85通りの比較が対象となった。研究のサンプルサイズは、試験参加グループで平均209名、ルーチンケアグループで平均409名であった。
全研究をプールしたメタアナリシスでは、臨床試験への参加は全生存アウトカムを改善した(HR 0.76)。しかし、試験参加者の適格基準についてルーチンケア患者とマッチングを行った研究においては、生存ベネフィットは縮小し(0.85)、質の高い研究のみをプールした場合には、有意なベネフィットは認められなかった(0.91)。また、潜在的な出版バイアスにより推定値を調整した場合にも、ベネフィットは消失した(0.94)。
評価
臨床試験への参加による生存ベネフィットは、データ全体では認められたものの、試験の参加基準を考慮すると縮小し(予後良好な患者が選択されていることを示唆)、試験の品質やバイアスリスクを考慮すると消失した。
臨床試験に注がれる努力を思えば意外な結果ではあるが、試験外のルーチンケアが劣っているわけではないというデータは、試験に参加できない患者にとっては心強い。


