迅速承認(Accelerated Approval)されたがん治療薬、ほとんどは生存・QOLベネフィットを示していない
Clinical Benefit and Regulatory Outcomes of Cancer Drugs Receiving Accelerated Approval
背景
迅速承認(Accelerated Approval)は、FDAが1992年に導入した薬剤承認プログラムで、重篤疾患に対するアンメットニーズを満たすために、代替エンドポイントを用いて予測された臨床的ベネフィットに基いて迅速な市場アクセスをもたらす制度である。このプログラムで承認された薬剤には、承認後の確認試験による臨床的ベネフィットの実証が求められ、実証できなかった場合には、承認が取り消される可能性がある。
アメリカBrigham and Women's HospitalのLiuらは、FDAデータを用いて2013年から2023年に迅速承認を受けたがん治療薬を特定し、これらの治療薬において最終的に確認された生活の質(QOL)・全生存期間へのベネフィット、および正式承認への移行または承認の取消を評価した。
結論
2013〜2023年に、129組の治療薬・適応症のペアが迅速承認を受けた。
承認から5年以上のフォローアップが可能であった2017年までの46件の適応について、29件(63%)が正式に承認され、10件(22%)が取り消され、7件(15%)はフォローアップ期間6.3年(中央値)時点で継続中であった。20件は、確認試験において臨床的ベネフィットを証明した。
承認取消までの期間は、9.9年から3.6年に短縮し、正式承認までの期間は1.6年から3.6年に延長した。
正式承認に変更された48件の適応のうち、19件(40%)は全生存率、21件(44%)は無増悪生存率、5件(10%)は奏効率+奏効持続期間、2件(4%)は奏効率によって変更が行われており、1件2%)では確認試験がネガティブであったにもかかわらず、正式承認が行われた。また、30件(63%)では迅速承認と正式承認で適応が異なっていた(より早期ラインでの使用など)。
評価
迅速承認から5年以上が経過した薬剤の半数以上が正式承認に至っていたものの、2割は承認取消となっており、さらにOSベネフィットが確認されたのは、半数に満たなかった。
承認後の確認試験については、より厳格な運用が必要であり、ベネフィットの不確実性について患者に正しく説明することも必須である。