コロナ二価ワクチン接種直後に脳卒中リスクはみられず
Stroke Risk After COVID-19 Bivalent Vaccination Among US Older Adults
背景
2023年1月、アメリカCDC・FDAは、Pfizer-BioNTech社のCOVID-19二価ワクチン接種直後の高齢者で虚血性脳卒中が増加する、という安全性シグナルを検出した。その後、フランスでの調査がこの関連を否定したものの(https://doi.org/10.1056/NEJMc2302134)、より多くのデータが求められていた。
アメリカFDAのLuらは、65歳以上で、いずれかのCOVID-19二価ワクチンを接種(n=5,397,278)後に脳卒中を発症したメディケア受給者(n=11,001)での自己対照ケースシリーズを実施し、いずれかのCOVID-19二価ワクチン、またはインフルエンザワクチンの接種後に脳卒中リスクが上昇するかを評価した。
結論
COVID-19二価ワクチン接種後に脳卒中を経験した11,001名の受給者において、接種後1〜21日・接種後22〜42日後のリスクウィンドウ(対照:43〜90日後)での脳卒中リスクの有意な変化は認められなかった(発生率比 0.72-1.12)。
ただし、COVID-19二価ワクチンとインフルエンザワクチン(高用量またはアジュバント)の併用接種後に脳卒中を経験した4,596名では、Pfizer-BioNTech BNT162b2二価ワクチンにおいて、接種後22〜42日後のリスクウィンドウで非出血性脳卒中が有意に増加し(発生率比 1.20)、Moderna mRNA-1273.222二価ワクチンにおいて、1〜21日のリスクウィンドウで一過性脳虚血発作が有意に増加した(発生率比 1.35)。また、インフルエンザワクチン接種後に脳卒中を経験した21,345名では、22〜42日後のリスクウィンドウで非出血性脳卒中が有意に増加した(発生率比 1.09)。
評価
COVID-19二価ワクチン単独接種で脳卒中のリスク上昇が認められないことを確認した。インフルエンザワクチンの接種は非出血性脳卒中の増加と関連しており、二価ワクチン・インフルエンザワクチン併用でのリスク上昇もこの関連によって引き起こされた可能性が高い。現在はオミクロン株対応一価ワクチンによって置き換えられた二価ワクチンであるが、一応の安心をもたらすデータである。