ラッシュアワーの大気をそのまま吸うと血圧が約5 mmHg上がる
Blood Pressure Effect of Traffic-Related Air Pollution: A Crossover Trial of In-Vehicle Filtration
背景
大気汚染への曝露は血圧の上昇と関連するという示唆がある。では自動車の車内で、フィルターされていない大気に曝露されると血圧にはどのような変化が生じるのか。
アメリカUniversity of WashingtonのYoungらは、ランダム化クロスオーバー試験により、交通関連大気汚染(TRAP)への曝露、または汚染大気のフィルタリングと血圧との関連を検証した。
参加者は血圧正常な22〜45歳(n=16)で、ワシントン州シアトルのラッシュアワーを事前に指定されたルートで合計3日間、うち1日では車両にHEPAフィルターを装着した状態で、2時間走行してもらい、各運転の前・中・後に14回、3分間の血圧測定を実施した。
結論
運転前の収縮期血圧は平均122.7 mmHg、拡張期血圧は平均70.8 mmHgであった。フィルタリングにより、車内の微粒子は86%減少した。
フィルタリングされた運転時と比較して、フィルタリングされていない運転時では、1時間後の収縮期血圧が平均4.5 mmHg高く、拡張期血圧は4.7 mmHg高かった。24時間後の収縮期血圧は平均1.1 mmHg高く、拡張期血圧は3.8 mmHg高かった。また、網膜中心動脈径(CRAE)は、フィルタリングされていない日で平均2.7 μm広かった。
評価
ラッシュアワーの大気への曝露が、その後1日近くにわたって血圧の上昇を引き起こすことを明らかにした。小規模研究で追試が不可欠である点、短期的な血圧上昇の長期的影響が明らかではない点など、いくつかの制限はあるが、大気汚染のインパクトを印象的に示した研究である。

