糖尿病治療薬GLP-1作動薬は大腸がんリスクを減らす
GLP-1 Receptor Agonists and Colorectal Cancer Risk in Drug-Naive Patients With Type 2 Diabetes, With and Without Overweight/Obesity
背景
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)は2型糖尿病(T2D)治療薬から減量薬ブロックバスターとなったが、免疫機能の調整等多面的な効果も示唆されている。
アメリカCase Western Reserve UniversityのWangらは、TriNetXプラットフォームを通じてT2D患者740万名を含む1億120万名の電子カルテにアクセスし、2005年〜2019年に大腸がん診断歴がなく、T2Dによる医療機関受診後に糖尿病治療薬の処方が行われた患者(n=1,221,218)において、GLP-1RA処方後15年以内の大腸がんリスクを、インスリン・メトホルミン・α-グルコシダーゼ阻害薬・DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬・スルホニル尿素薬・チアゾリジンジオンと比較した。
結論
GLP-1RAは、インスリン(HR 0.56)・メトホルミン(0.75)・SGLT2阻害薬(0.77)・スルホニル尿素薬(0.82)・チアゾリジンジオン(0.82)と比して有意に大腸がんリスクを低下させた。α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬についても点推定では、リスク低下傾向がみられたものの、統計的に有意ではなかった。
この関連は男女問わず認められ、また、肥満/過体重の患者では、より関連が強い傾向がみられた。
評価
痩せ薬として喧伝され、不適切な処方が問題視されているGLP-1RAであるが、この研究では、T2D患者の大腸がんリスクの低下と関連していた。
体重はよく知られた大腸がんリスクであり、この因子が関連を媒介していると考えるのが自然だが、過体重・肥満患者に限ってもリスク低下が認められること、同じく体重減少効果を持つとされるSGLT2阻害薬との比較でも同じ効果が認められており、GLP-1作動薬に固有の機序を持つ可能性もある。

