持続緩徐式血液濾過器「ヘモフィールSHG」の本格発売開始について

東レ・メディカル株式会社
2011年2月16日

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣)は、 このたび、急性期の腎不全をはじめ、多臓器不全や敗血症などを合併した腎不全に対する体外循環血液浄化療法、持続緩徐式血液濾過法に使用される持続緩徐式血液濾過器「ヘモフィールSHG」(承認番号: 22100BZX01046000)を新たに開発し、本格発売を開始します。「ヘモフィールSHG」は、内蔵されている中空糸膜への血小板付着を低減させることで、血液の凝固反応を抑制する性質(抗血栓性)の向上をめざしたのが特徴です。販売は東レ・メディカル株式会社(本社:千葉県浦安市、社長:田中資長、東レ100%出資)が行います。

 持続緩徐式血液濾過器を用いた治療は長時間に及ぶもので、高い抗血栓性が要求されます。従来は、長時間使用すると膜に血小板やタンパク質が付着し、膜の性能が低下する場合もあり、さらなる抗血栓性の向上が要求されていました。本製品は「ヘモフィールSH」をベースに中空糸膜表面の親水性高分子層に着目し、東レが長年培ってきた独自のナノテクノロジー(ナノポア形成技術)を駆使して開発したもので、優れた分離性能と抗血栓性に影響する血小板の付着抑制の両立を実現しました。

 本製品の開発においては、親水性高分子を膜表面に均一に配置しつつ、ナノメートルオーダーで親水性高分子層の厚みを制御することで、優れた分離性能を維持しつつ、血小板の付着を自社従来品と比べて大幅に低減することができました。モデル試験の結果、血小板付着抑制性能は自社従来品よりも20〜30倍高いことが確認できました。さらに、ガンマ線を用いた東レ独自のポリマー架橋滅菌処理技術を本品にも適用し、中空糸膜の親水性高分子を架橋固定化することで溶出物の低減を図っています。東レは本製品が長時間の体外循環血液浄化療法において、抗血栓性のさらなる向上を達成できるものと期待しています。

 東レは1991年に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系中空糸を用いた血液浄化器「ヘモフィールCH」(承認番号:20300BZZ00624000)の製造承認を取得し、2000年には、PMMA系中空糸よりも高い濾過性能と透水性能を有するポリスルホン系中空糸を用いた血液浄化器「ヘモフィールSH」(承認番号:21200BZZ00274000)を製品化し、主に、救急・集中治療領域において、急性腎不全や重篤な慢性腎不全に対して多くの使用実績を上げてきました。

 東レはコーポレート・スローガン"Innovation by Chemistry"のもと、Chemistry(化学)を核にInnovation(革新と創造)に挑戦し、「先端材料で世界のトップ企業」を目指しています。東レは有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、およびナノテクノロジーをコア技術として新製品・新技術の創出を進め、ライフサイエンス事業の拡大をめざします。

以上


<用語説明>

「持続緩徐式血液濾過法」
 時間をかけてゆっくりと血中から物質除去を行う治療法。循環動態に与える影響が少ないという利点があります。

「腎不全」
 腎臓の働きが正常の50%以下に低下した状態を腎不全といいます。体液の状態を一定に保つことができなくなるため、血液浄化治療を行なう必要があります。

「抗血栓性」
 医療材料が血液と接触すると、血液中のタンパク質や血小板が材料に付着し、さらには、血栓が形成されることがあります。このような血液の凝固反応を抑制する性質を抗血栓性と呼びます。血液と接触する医療材料の多くでは、血小板の付着を高度に抑制する抗血栓性材料が望まれています。

「ナノポア形成技術」
 ナノメートルオーダーのポア=孔(あな)を形成する技術。「ヘモフィールSHG」は、相分離法を用いてナノポアを形成しています。相分離の大きさをナノレベルで制御することで、中空糸膜の内側表面に約10nmの微細孔構造を形成させることができます。

企業サイトURL
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ニュース・プレスリリース
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