趣味を持つ高齢者は精神的健康度が高い
Hobby engagement and mental wellbeing among people aged 65 years and older in 16 countries
背景
高齢者における孤独や社会的孤立、メンタルヘルスの悪化は身体的健康の悪化や早期死亡のリスクとみなされており、高齢化の進行する世界にあって公衆衛生上の大きな課題となっている。世界各国からの報告では、趣味活動への参加が高齢者のうつ病発症率を低下させ、幸福度を向上させることが示唆されている。
イギリスUniversity College LondonのMakらは、世界16ヵ国を対象とした5件の縦断研究から、65歳以上の参加者を対象に趣味活動への参与と、各種のメンタルウェルビーイング尺度との関連を検討した。
含まれた縦断研究は、イギリスのEnglish Longitudinal Study of Ageing(ELSA)、日本のJapan Gerontological Evaluation Study(JAGES)、アメリカのUS Health and Retirement Study(HRS)、ヨーロッパのSurvey of Health, Ageing and Retirement in Europe(SHARE)、中国のChina Health and Retirement Longitudinal Study(CHARLS)であり、計93,263名の参加者が4〜8年フォローアップされた。
結論
各国の参加者の平均年齢は71.7〜75.9歳で、趣味への参与率は最も低いスペインの51%からデンマークの96%まで、国によって大きな幅があった(日本は90%)。
固定効果モデルにより、趣味参加とメンタルウェルビーイングの変化との関連は各種因子を考慮し、縦断的に検証され、それらは新たな多国間メタアナリシスに統合された。趣味参加は抑うつ症状と負の相関があり(係数-0.10)、自己報告による健康(0.06)・幸福度(0.09)・生活満足度(0.10)と正の相関があった。
趣味への参与率は、各国の世界幸福度指数・1人あたりの国内総生産と正に相関し、ジニ係数と負に相関したが、これらの因子が趣味参与と、メンタルウェルビーイングとの関連に与える影響は小さかった。また、性別や就労状況、趣味のタイプにかかわらず、関連は認められた。
評価
趣味は精神的健康にポジティブな効果をもたらしており、この知見は国を超えて広く認められた。含まれたデータの半数超は日本のJAGESからのもので、日本の地域包括ケアシステムが推進する介護予防・生活支援にも重要なヒントをもたらす。