腸内細菌叢とインスリン抵抗性の関連を包括解析
Gut microbial carbohydrate metabolism contributes to insulin resistance

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
Nature
年月
September 2023
621
開始ページ
389

背景

腸内細菌叢と各種疾患との関連を探る研究が活発化しており、インスリン抵抗性にも関連することが示唆されている。
日本RIKEN Center for Integrative Medical Sciences(理化学研究所 生命医科学研究センター;IMS)のTakeuchiらは、定期健康診断を受診した20〜75歳の個人から募集された、肥満・前糖尿病状態・それ以外の被験者306名(男性71%,糖尿病患者は除外)において、検診項目に加えて便と血液サンプルを収集、統合オミクス解析を実施した。さらに、そこで特定された便代謝物とインスリン抵抗性、腸内細菌叢パターンとの関連を解析し、最後にインスリン感受性に関連する細菌の治療的効果をマウスモデルで検証した。

結論

便サンプルのオミクスデータは、インスリン抵抗性の予測において、メタゲノム解析や16S rRNA解析を上回った。臨床マーカーと便代謝物クラスター(CAG)との関連を調査すると、インスリン抵抗性と関連するCAGは、主としてブドウ糖・果糖等の単糖類と関連することが明らかとなった。腸内細菌叢と細菌の遺伝的機能の解析からは、インスリン抵抗性・単糖類と正に関連する細菌グループ(Blautia属、Dorea属)、負に関連する細菌グループ(Bacteroides属、Alistipes属)が特定された。また、腸内細菌・便代謝物に加え、血中サイトカイン解析および末梢血単核細胞転写物の解析を併せたネットワーク解析により、便中の単糖類が、腸内細菌・炎症関連遺伝子・炎症サイトカインを繋ぐハブとなっていることが明らかとなった。
さらに、高脂肪食後の血糖値に対する細菌の治療効果を実験モデルで検証し、Alistipes属のAlistipes indistinctusの投与がインスリン抵抗性を改善することが明らかになった。また、A. indistinctus投与は、腸管の単糖類を有意に減少させた。

評価

腸内細菌叢の研究は盛んだが、腸内細菌叢と表現型との結びつきを機序レベルまで掘り下げた研究は少ない。本研究は、インスリン抵抗性と腸内細菌の包括的解析から、両者を結ぶピースとして単糖類を特定し、これらが介入の標的となりうることを実証した。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell