マジックマッシュルームの成分で拒食症を治療する
Psilocybin therapy for females with anorexia nervosa: a phase 1, open-label feasibility study
背景
シロシビンは、マジックマッシュルームと称されるキノコ類に含有されるセロトニン作動性の幻覚成分で、近年、治療抵抗性のうつ病など精神疾患に有望視されている(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2206443)。
アメリカUniversity of California, San DiegoのPeckらは、DSM-5基準を満たす神経性やせ症(AN)または部分寛解ANを募集し(n=10)、心理的サポートと併用して合成シロシビン(25 mg)の単回投与を行い、安全性・忍容性を評価し、有効性についても探索的に評価した。
結論
シロシビンの急性効果は全参加者でよく忍容され、重篤内有害事象は認められず、心電図にも臨床的に重要な変化は認められなかった。投与前に朝食を食べる必要があった参加者2人が、フォローアップ時に低血糖を発症したが、24時間以内に解消した。
自殺傾向はColumbia Suicide Severity Rating Scaleによって評価され、希死念慮の増加や自殺行動はみられなかった。Eating Disorder Examinationのサブスケールでは、ベースラインから1ヵ月・3ヵ月時点にかけ、体重への懸念が有意に低下した。体型への懸念も1ヵ月時点では有意に低下していた。4人の参加者では、3ヵ月時点でのEDEスコアがコミュニティの基準(標準偏差)内へと低下した。平均すると、BMIの変化は有意ではなかったものの、5名は3ヵ月後にBMI増加を示した。参加者はシロシビン経験を有意義と捉えており、9名は人生により前向きな気持ちになったことを報告した。
評価
拒食症に対するシロシビン治療を検証した初めてのデータである。シロシビンは安全で忍容性が高く、参加者の気分にポジティブな影響を与えたが、摂食障害への効果はまちまちであった。効果的な用量などは不明であり、大規模検証が必要である。