APOL1バリアント保有巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)患者へのAPOL1チャネル阻害薬inaxaplinは有望
Inaxaplin for Proteinuric Kidney Disease in Persons with Two APOL1 Variants
背景
アポリポ蛋白L1遺伝子(APOL1)の毒性機能獲得型バリアント保有者の急速進行性蛋白尿性腎症リスクが明かになり、2バリアントG1・G2は、アフリカ系アメリカ人の〜13%が保有するとされている。
アメリカVertex PharmaceuticalsのEgbuna ら(VX19-147-101)は、同腎症に対する小分子化APOL1チャネル阻害薬inaxaplinの効果を検証する細胞・マウスレベル実験、および第2a相臨床試験を行った(n=16)。細胞レベル実験では、そのAPOL1 チャネル機能阻害能を評価し、組み換え腎症モデルマウスレベルでは、蛋白尿に対するその効果を評価した。臨床試験は単群非盲検で、2バリアントを有し、生検確認巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と蛋白尿を有する参加者に同薬を13 週投与した。一次アウトカムは、13週時点におけるUPCRのベースラインからの変化(%)である。
結論
前臨床試験でinaxaplinの細胞APOL1 チャネル選択的阻害効果とモデルマウスでの蛋白尿低減効果を確認した。臨床試験では、アドヒアランス基準を満たした13名で、UPCRの平均−47.6%低下を認めた。試験中止に至る有害事象はなかった。
評価
2010に同定され、特にアフリカ人にトリパノソーム耐性を与えるとみられるバリアントである。チャネル阻害薬inaxaplinの開発と臨床架橋は画期的であり、基礎・臨床両レベルで腎疾患へのアプローチ全体にインパクトを与える。後相試験への期待は大きい。