COVID-19による超過死亡を精密評価する
Estimating excess 1-year mortality associated with the COVID-19 pandemic according to underlying conditions and age: a population-based cohort study
背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者は広汎PCR検査でもすべて捉えることは困難で、「PCR陽性死者」では死亡者の全容を捉えることはできない。英University College LondonのBanerjeeらは、NHS電子カルテ400万のビッグデータ(Health Data Research UK-CALIBER)に基づいてCOVID-19関連超過死亡を予測するモデルを開発し、評価ツールを公開した。COVID-19流行下で3レベルの相対リスク(RR、1.5・2.0・3.0)を想定し、各条件下での高リスク集団での1年間死亡率を(完全抑制・部分抑制・緩介入・介入なし)条件下で推定するものである。
結論
3,862,012名(女性50.7%)を解析した。対象主体の20%(13.7%が70歳)がハイリスク集団(基礎疾患が1つ以上)であった。ハイリスク集団における1年死亡率は、4.46%と推定された。死亡率は年齢と基礎疾患により著しく異なった(COPD:8.62%、CKD:7.84%、心血管疾患:6.37%、DM:4.1%)。70歳以上男性ではすべて上昇した。完全抑制シナリオ下ではベースライン死亡に対し、RR:1.5で2名、RR:2.0で4名、RR:3.0で7名の超過死亡が発生する。緩介入シナリオでは、各18,374名・36,749名・73,498名の超過死亡が発生し、対策なしシナリオでは、各146,996名・293,991名・587,982名の超過死亡が発生する。
評価
PCR陽性者だけの死亡を「COVID-19死亡」としていると、「心不全・腎不全」等と診断される死者が増えることになる。また、このモデルではがん患者へのインパクトは考慮されておらず、それも含めるとさらに増加する。日本の現在の死亡データとは整合しないとみられ、カルテレベルでの検証を開始する必要がある。


