マラソン走者を腸から支えるVeillonella atypica
Meta-omics analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism
背景
ヒト腸内細菌叢と運動パフォーマンスの関係は。Harvard Medical SchoolのKosticらは、ボストンマラソン前後1週間の選手15名と座位時間が長い非ランナー対照者10名の便サンプルへの解析を行い、更にウルトラマラソン選手等一流アスリート87名コホートにおいてショットガンメタゲノミック分析を行った。
結論
アスリート便中には対照者よりVeillonella属菌が多く、さらにマラソン前と比べマラソン後にも増加が認められた。Veillonella atypica株を単離しマウスに移植すると、トレッドミルでの走行時間が増加した。同菌種は運動により発生した乳酸を代謝してプロピオン酸に変換し、そのプロピオン酸を用いて運動耐容能が改善される可能性がある。
評価
運動能を増進する腸内細菌種としてVeillonella atypicaを特定しただけでなく、乳酸の除去でなくプロピオン酸の生成というその作用機構まで示唆した。運動生理学だけでなく肥満や糖尿病とも関連する可能性のある重要な発端研究である。