X連鎖性網膜分離症に対する網膜下遺伝子治療は有望
Subretinal Gene Therapy for X-Linked Retinoschisis
背景
X連鎖性網膜分離症(XLRS)は、RS1遺伝子の病原性変異に起因し、黄斑変性や視力低下を来す比較的高頻度の進行性遺伝性網膜疾患である。
中国Sichuan UniversityのLuら(ChiCTR2300076682)は、5〜11歳の同疾患患者12名を対象に、ヒトRS1遺伝子を組み込んだAAV8ベクター(scAAV8-hRS1)を片眼に単回網膜下投与する第1/2相試験(単群試験)を行った。
一次アウトカムは、投与後52週間の安全性であった。
結論
投与後52週時点においてグレード3以上の有害事象や眼内炎症の報告はなく、治療眼の最高矯正視力(BCVA)は平均10.8文字改善(未治療眼は2.4文字改善)した。また、術後13週までに全12名で黄斑分離腔の閉鎖が確認され、中心網膜厚は治療眼で平均437.7 μm減少(未治療眼は17.2 μm減少)したが、光受容体・双極細胞機能や黄斑感度には臨床的に意味のある変化は認められなかった。
評価
XLRSに対する遺伝子治療では、すでに硝子体内投与が試みられているが、網膜への遺伝子導入は不十分だった。この中国研究は、網膜下注入アプローチによりこの限界を突破し、全例で網膜分離腔の閉鎖と構造修復を達成した点に意義がある。未だ小規模な非盲検化単群試験であるため、評価バイアスや小児特有の視力測定のばらつきがあること、網膜硝子体手術に高度の専門性を要する点、さらに1名で手術に起因する黄斑円孔、別の1名で網膜萎縮のリスクが生じた、という限界・問題点も存在する。


