男子ラグビーにおけるタックルの高さは脳震盪・頭部加速度に影響するか:シミュレーション解析
Tackle higher or lower? Simulation to evaluate how changing the tackle height would impact the number of concussions and head acceleration events in men's professional rugby league
背景
ラグビーにおいてタックルの高さは、頭部負傷を低減できる主要な修正可能リスク因子とされているが、ルール変更の傷害予防効果は。
イギリスLeeds Beckett UniversityのOwenら(CARR)は、2023年の男子スーパーリーグ全試合参加者から臨床診断された56件の脳震盪データを収集し、計時マウスガード(iMG)の着用に同意した選手92名から、23,081回のタックルにおける4,632件の頭部加速度イベント(HAE)データを計測・収集した。これらの実データから役割別の負傷確率を算出し、モンテカルロ・シミュレーションによって、タックルの高さの変更がシーズン全体の頭部負傷数に与える影響を検討した。
結論
タックルの高さを低く制限するシミュレーションにより、ボールキャリアの25g以上のHAE発生確率が現行の1.60%から0.69%へ低下するなど、シーズン全体の軽〜中等度(55g未満)のHAEは減少した。しかし、総脳震盪発生数(n=56)や高負荷HAE(55g以上)の発生確率においては、タックル高を低下させても現行の分布と比較して有意な減少効果は推定されなかった。
評価
男子プロラグビーリーグを対象に、接触ルールの変更効果をコンピューターモデル上で予測した途上・確認研究である。タックルの高さの低下はボールキャリア側の頭部リスクを減らす一方で、タックラー側のリスク(25g以上のHAEなど)を増加させるという役割特異的なリスク移動が生じうる。このシミュレーション手法は、ルール変更実装前に安全性と競技性のバランスを評価する有用な枠組みを提供するが、画一的な規制の脳震盪のような低頻度イベントに対する直接的負傷抑制効果は、確認されなかった。


