アデノウイルスベクターワクチンによるVITTの病態を解明
Adenoviral Inciting Antigen and Somatic Hypermutation in VITT
背景
アデノウイルスベクターを用いた新型コロナワクチン接種後に稀に発生するワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)は、血小板第4因子(PF4)に対する自己抗体が原因であるが、なぜ特定のワクチンや自然のアデノウイルス感染によってこの自己抗体が誘導されるのか。
カナダMcMaster UniversityのWarkentinらは、VITT患者100名の抗体を用い、アデノウイルス由来タンパク質とPF4の関連を解析した。
結論
VITTは、特定の免疫グロブリン軽鎖アレル(IGLV3-21*02または*03)を持つ個人において、アデノウイルスの核タンパク質pVIIの特定エピトープを認識する抗体に「K31E」という体細胞超変異が生じることで発生することが判明した。99名の患者がこの特定アレルを保持しており、この変異によって抗体の標的がpVIIからPF4へと誤誘導され、強力な血小板活性化能を持つ病原性抗体へと変化する。
評価
VITTの機構を、アデノウイルスpVIIとPF4の分子模倣、および単一の遺伝子変異と同定したランドマーク研究である。著者らは、IGLV3-21*02/03アレルの頻度が白人(約60%)に比べアジア人(約20%)で低いことが、アジア圏でのVITT発症率の低さを説明する、と示唆している。
この発見はVITTの診断や治療に寄与するだけでなく、将来的なアデノウイルスベクターワクチンの設計において、問題となるpVIIエピトープを改変・置換することで、より安全なプラットフォームを構築できる道筋を示した。ただし、マウスモデルでの再現にはヒト特有のアレルが必要なため、さらなる検証にはヒト化モデルの開発が待たれる。


