肩峰下インピンジメント症候群への肩峰下除圧術(ASD)は無益:FIMPACT試験
Arthroscopic subacromial decompression versus placebo surgery for subacromial pain syndrome: 10 year follow-up of the FIMPACT randomised, placebo surgery controlled trial
背景
肩峰下インピンジメント症候群に対する肩峰下除圧術(ASD)は、最も一般的な整形外科手術の一つであるが、その有効性のエビデンスは堅固でない。
フィンランドHelsinki UniversityのPaavolaら(FIMPACT)は、ASDの10年にわたる長期的な有効性を、偽手術および運動療法と比較して検証するRCTを行った。
一次アウトカムは、安静時および腕活動時の肩の痛みであった。
結論
術後10年時点において、ASDは偽手術や運動療法と比較して、一次アウトカムを有意に改善しなかった。視覚的アナログスケール(VAS)の平均差は、ASD群と偽手術群の間で−3.2ポイント、ASD群と運動療法群の間で−9.4ポイントであり、いずれも臨床的に意味のある差とされる15ポイントを下回った。全群で10年間にわたる症状の改善がみられたが、手術による上乗せ効果は認められなかった。
評価
10年という長期追跡とシャム手術という厳格な対照設定により、ASDの有効性に関する議論に決定的なエビデンスを提示した。著者らは、ASDがいまだに広く行われている現状について、「医学の逆転(medical reversal)」の典型例であると指摘している。イギリスでは、NHSだけでもASDに年間多額の費用が投じられているが、本結果は「ASDは臨床試験以外の日常診療で提供されるべきではない」という強いメッセージを発信している。手術という侵襲的で負担の大きい選択肢と運動療法などの非侵襲的な治療が長期的にみて同等に有効であることを示し、整形外科領域における診療指針の根本的な見直しを迫るものである。


