特発性正常圧水頭症(iNPH)に対するシャント術の歩行機能改善効果をシャム手技対照RCTで確定:PENS試験
A Randomized Trial of Shunting for Idiopathic Normal-Pressure Hydrocephalus
背景
特発性正常圧水頭症(iNPH)は髄液シャント術が標準治療だが、その有効性にはプラセボ効果等の疑義が残っていた。
アメリカJohns Hopkins HospitalのLucianoらは、北米とスウェーデンにおいて、術前タップテスト等により髄液排出による歩行速度の改善が確認されたiNPH患者(平均年齢75歳)99名を対象に、脳室腹腔シャント術の有効性を検証するRCTを行った(対照:シャム手技)。一次アウトカムは3ヵ月後における歩行能力である。
結論
シャント手術の一次アウトカム効果を認めた:シャント群はプラセボ群と比較して歩行速度(治療差0.21 m/秒)および歩行・平衡機能(Tinettiスコア )を平均変化量2.9点 vs. 0.5点で有意に改善した。認知機能(MoCAスコア)・排尿障害(OAB-qスコア)には有意差がなかった。ただし、硬膜下血腫(12% vs. 2%)や体位性頭痛(59% vs. 28%)などの合併症はシャント群で有意に多発した。
評価
iNPHに対する髄液シャント手術の歩行障害への有効性を、初のシャム手技(プラセボ)対照RCTにより確定した。この結果は、シャント手術が歩行障害の良好な改善をもたらすが、認知機能の改善は一様ではないという臨床実感と一致する。また、硬膜下血腫や体位性頭痛の合併症増加も示されており、手術適応の判断と説明・同意に優れた情報を提供する。
日本の多くの施設ではiNPHに対する髄液シャント手術は腰椎腹腔シャント手術(LPシャント)が行われているが、本PENS試験では脳室腹腔シャント手術(VPシャント)が選択されている。


