標的型室内残効性スプレー剤散布はネッタイシマカ媒介疾患予防に無益
Randomized Trial of Targeted Indoor Spraying to Prevent Aedes-Borne Diseases
背景
ネッタイシマカが媒介するチクングニア熱・デング熱・ジカ熱等アルボウイルス感染症が増えているが、対策は不十分である。
アメリカEmory UniversityのDeanらは、メキシコ メリダの2〜15歳の子供4,461名を対象に、標的型室内残効性スプレー剤(Targeted indoor residual spraying: TIRS)散布によるネッタイシマカ媒介疾患予防効果を定量化するクラスターRCTを実施した。
一次エンドポイントは、ネッタイシマカ媒介疾患の症状発現であった。
結論
TIRSの一次エンドポイント効果を認めなかった[屋内でのネッタイシマカ密度は59%低下したが、一次エンドポイント有効性は3.9%であった]。地域サーベイランスデータによる分析では、介入の地域効果は24.0%と推定された。
評価
最もシンプルな、「スプレーで蚊を殺す」戦略の昆虫学的有効性(entomologic efficacy)が、有効な疫学的帰結(epidemiological outcomes)につながらなかった、という報告である。主因として、参加者の高い移動性によるクラスター外での曝露が示唆される。TIRSの前進には、昆虫学的指標と疫学的指標の関連の解明が必要となった。なお、チクングニア・デング・ジカに対してはワクチンアプローチと、ここでのようなベクターコントロールアプローチが両輪となるが、ワクチンはデングのみが承認され、しかも汎用は制限されている。


