アメリカでのワクチン接種率低下で感染症再燃リスクが高まる
Modeling Reemergence of Vaccine-Eliminated Infectious Diseases Under Declining Vaccination in the US

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
April 2025
333
開始ページ
2176

背景

アメリカでは小児ワクチン接種の普及で感染症が根絶されたが、接種率低下と接種スケジュール縮小要求により、再出現リスクが懸念されている。
アメリカStanford UniversitのKiangらは、麻疹・風疹・ポリオ・ジフテリアの小児予防接種が減少するシナリオ下におけるアメリカ内の症例数と合併症数を推定した。
アメリカ50州とコロンビア特別区を対象に、地域固有の人口動態・集団免疫・輸入感染症リスクを組み込んだシミュレーションモデルを構築し、現在のワクチン接種率データ(2004〜2023年)を基に、異なる接種率による帰結シナリオを評価した。
一次アウトカムは、推定症例数であった。

結論

現状のワクチン接種率が維持された場合、麻疹が平均20.9年後に再び流行し、25年間で約85万件の症例が発生すると予測された。MMRワクチン接種率が10%低下すると麻疹症例は1,110万件に増加する一方、5%上昇すると、わずか5,800件しか減少しないと予測された。
小児定期予防接種が50%減少した場合、25年間で麻疹5,120万件、風疹990万件、ポリオ430万件、ジフテリア197万件の症例が発生し、それぞれ重篤な合併症や死亡も増加すると予測された。このシナリオでは麻疹が4.9年で、風疹が18.1年で風土病化する可能性が示唆された。

評価

アメリカでは麻疹根絶から四半世紀が経過したが、小児のワクチン接種率低下が続き、風土病性麻疹の再流行が危惧されている。今年に入り、CDCは10件の麻疹発生と800名以上の感染を確認し、テキサス州では624名が感染、2名が死亡した。今年4月時点で、アメリカの麻疹症例数は2024年全体を約180%上回り、過去25年で2番目に多い年間症例数となった。特にテキサス・ニューメキシコ・オクラホマ州での発生は、ワクチン接種率の低いコミュニティに集中しており、症例の96%がワクチン未接種者か接種状況不明者であった。
トランプ政権下でのケネディHealth and Human Services長官就任以前には、ワクチン忌避や反ワクチン運動はフリンジに留まっていたが、同長官の就任後は反ワクチン政策の制度化が進んでいる(特に諮問委員会の完全入れ替えとGaviアライアンスへの資金提供中止)。現在のままでは、この研究で予測された最悪のシナリオが実現する可能性がある。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell