70年ぶり、欧州でジフテリアがアウトブレーク:移民一時収容施設
Corynebacterium diphtheriae Outbreak in Migrant Populations in Europe

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
June 2025
392
開始ページ
2334

背景

2022年夏以降、欧州の移民一時収容施設でジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)感染症例が急増した。皮膚感染が主で、一部で呼吸器感染や死亡例も報告された。
この集団発生の臨床・疫学・微生物学的特徴を評価する目的で設立された2022 European Diphtheria Consortiumは、2022年1月〜11月における欧州10ヵ国毒素産生性ジフテリア菌感染症例の分析・評価を報告している。患者面接で出身国・入国経路データを収集し、細菌分離株で全ゲノムシーケンシングと抗菌薬感受性試験を実施し、分離株とその抗菌薬耐性遺伝子の系統発生的関係を評価した。

結論

研究期間中に362名から363株の毒素産生性ジフテリア菌が同定され、346名の臨床データが得られた。内訳は皮膚ジフテリアが77.5%、呼吸器ジフテリアが15.3%で、6%に両症状があった。4つの主要な遺伝子クラスターが確認され、集団発生が多クローン性であることを示した。ermX遺伝子(エリスロマイシン耐性)とpbp2m・blaOXA-2遺伝子(βラクタム耐性)が一部の分離株で検出された。耐性株はそれぞれの遺伝子に応じた薬剤耐性を示し、共通祖先は2017〜20年に存在したと推定された。

評価

患者の約98%は男性で、96%は最近の移住者、年齢中央値は18歳、症例のほぼ半数が16〜20歳であった。出身国が判明している患者の83.5%はアフガニスタンまたはシリア出身で、大多数は西バルカン半島を経由して移住してきた。pbp2m・ermX遺伝子の汎在は大きな懸念だが、ワクチン接種のため一般人口への波及は未だみられていない。移民起源の感染症では他に結核・肝炎があり、欧州の公衆衛生は、大きなチャレンジを受けている。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell