セマグルチドはMASH患者の肝線維化を軽減する:ESSENCE試験
Phase 3 Trial of Semaglutide in Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis
背景
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドが有効であることが示唆されている。
アメリカVirginia Commonwealth UniversityのSanyalら(ESSENCE)は、生検でMASHと肝線維化ステージF2またはF3と診断された1,197名の患者に対するセマグルチドの効果・安全性を検証する第3相試験を行った(対照:プラセボ)。追跡期間は240週であり、本報告は、最初の800名を対象とした72週時点での中間解析(パート1)の結果である。一次エンドポイントは、肝線維化の増悪を伴わない脂肪肝炎の消失と、脂肪肝炎の増悪を伴わない肝線維化の改善であった。
結論
セマグルチドの一次エンドポイント効果を認めた[実薬群で肝線維化増悪を伴わない脂肪肝炎の消失が62.9%に認められ、プラセボ群(34.3%)に優った]。また、脂肪肝炎の増悪を伴わない肝線維化の改善、脂肪肝炎と線維化双方の改善、体重減少率でもセマグルチドが優位であった。一方、身体痛スコアに群間差はなく、消化器系有害事象はセマグルチド群で高頻度であった。
評価
MASHは肥満薬の重要な展開ターゲットであり、ティルゼパチドとsurvodutideも臨床試験中だが、セマグルチドが初めて第3相ポジティブ結果に到達した。FDAはPriority Reviewを行っており、承認可能性は高い。限界としては、黒人患者数が少ないこと、またアルコール関連バイオマーカー、治療応答決定要因としての遺伝子多型、治療中の体組成の変化等のデータが不足していること、が挙げられる。