異染性白質ジストロフィー(MLD)に遺伝子治療arsa-cel登場
Long-Term Effects of Atidarsagene Autotemcel for Metachromatic Leukodystrophy
背景
異染性白質ジストロフィー(MLD)は、アリルスルファターゼA(ARSA)欠損による希少なリソソーム病である。
イタリアIRCCS San Raffaele Scientific InstituteのAiutiらは、MLD患者39名を対象に前向非盲検臨床試験と拡大アクセスプログラムにより、造血幹細胞遺伝子治療arsa-cel(atidarsagene autotemcel)を実施し、未治療患者49名と比較した。
一次エンドポイントは、重度運動障害のない生存期間、追跡期間中央値は、6.76年であった。
結論
Arsa-celは未治療と比較し、発症前の後期乳児型・発症前の早期若年型・初期症状のある早期若年型MLD患者において、重度運動障害または死亡リスクを有意に低下させた(各 P<0.001・P=0.04・P<0.001)。6歳時点の重度運動障害なし生存割合は、未治療後期乳児型で0%に対し、治療した発症前後期乳児型で100%であった。10歳時点では、未治療早期若年型11.2%に対し、治療した発症前早期若年型87.5%、初期症状あり早期若年型80.0%であった。遺伝子挿入による腫瘍発生はみられず、主なグレード3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症であった。Arsa-cel治療患者の15%で、一過性の抗ARSA抗体を検出した。3名が死亡したが、arsa-celとの関連はないとされた。
評価
4〜16万新生児に一人という致命的希少疾患に対する、Orchard TherapeuticsによるARSA遺伝子導入自家HSCを用いた遺伝子治療で、昨年早発型MLDに対する唯一の治療法としてFDA承認された。
最終追跡調査では、治療された発症前早期若年性MLD生存患者7名中5名が、治療を受けなかった兄弟姉妹の症状発現年齢を超えていた。
運動機能・認知機能・言語能力は、治療された発症前後期乳児型MLD患者で未治療患者より良好に維持され、発症前早期若年性MLD患者も年齢相応の能力を示した。初期症状のある早期若年型MLD患者では転帰にばらつきがあったが、未治療患者より重度運動障害のない生存期間が有意に長かった。早期治療が重要であり、新生児スクリーニングによる早期診断が最大の利益をもたらす。