コンゴ民主共和国エボラアウトブレーク時のワクチン包囲(リング)接種戦略は成功
Ebola Outbreak Response in the DRC with rVSV-ZEBOV-GP Ring Vaccination
背景
2018年にコンゴ民主共和国(DRC)で発生したエボラウイルス病(EVD)は、アウトブレイク時にはワクチンはなかったが、直ちにrVSV-ZEBOV-GPワクチンが開発され、新規発症患者を「包囲」してワクチン接種を行う「包囲戦略(Ring Vaccination)」が開発された。
DRC Ebola Ring Vaccination TeamのMuyembeらは、2018年8月8日〜2020年1月14日にワクチンを接種した265,183名のうち102,515名を対象に、0・3・21日目に安全性のモニタリングを行った。
ワクチン接種後9日以内、10〜29日目、30日目以降の期間におけるEVD 発症率を評価した。発端患者における症状出現後21日以内に、新規症例またはクラスターを包囲する1,853のリングを確認し、リングメンバーにワクチン接種を勧めた。ワクチン接種者は、2020年半ばの流行終息までのEVD発症をモニターした。
結論
接触者と接触者の接触者のうち、434名のEVD患者(リングあたり0.2件)が発生し、そのほとんどはワクチン接種後0〜9日以内または10〜29日以内であった。平均170日の追跡期間中、さらに22名が30日目以降にEVDと診断された。発端患者のEVD発症後の包囲接種等制御方策の開始が早いほど、接触者間のEVD発症率はより早く低下した。各サブグループにおけるEVD発症率は10日目頃に急激に低下した。10日目に発症していなかった接触者と、接触者の接触者における10〜29日目のEVD発症率は1,000人あたり0.16人であった。この発症率は、ワクチン接種がリング形成後21日目まで延期されたギニアにおける発症率1,000人あたり4.64人よりもはるかに低かった(率比 0.04)。ワクチンの安全性に関する懸念は認められなかった。
評価
アウトブレークが急激に進行する途上国で採らざるをえなかった手法だが、有効であったことが証明された。著者らは、「包囲接種戦略は効果的で、運用効率が高く、集団ワクチン接種と比べて投与量を節約できる。さらに、高リスク状況で活動する医療チームにとっても、実行可能性を高めた」としている。追加調査では、接触者間のEVDリスクは女性より男性の方が、また成人より小児の方が低く、男性/非妊娠女性と妊婦は同程度で、感染者がワクチン接種者であった場合はリスクが低かった(率比 0.43)。