西アフリカ人でAPOL1腎症を大規模調査
APOL1 Bi- and Monoallelic Variants and Chronic Kidney Disease in West Africans
背景
アポリポ蛋白質L1(APOL1)遺伝子変異は、黒人アメリカ人の慢性腎臓病(CKD)リスクを高めることが知られているが、アフリカの祖先集団に関するデータは、少ない。
アメリカUniversity of KansasのOjoら(H3Africa Kidney Disease Research Network)は、ガーナとナイジェリアの参加者8,355名を対象として、APOL1変異とCKDの関連に関する症例対照研究を実施した。CKDステージ2〜5の患者4,712名と糸球体疾患の患者866名を、対照者2,777名と比較した。
結論
参加者866名中、単一アレルバリアント保有率は43.0%、両アレルバリアント保有率は29.7%であった。後者は、前者またはリスクアレル非保有参加者よりCKDになるオッズが高かった(調整オッズ比 1.25)。また、巣状分節性糸球体硬化症のオッズも高かった(調整オッズ比 1.84)。単一アレルバリアント保有者は、リスクアレル非保有者よりCKDのオッズが高く(調整オッズ比 1.18)、巣状分節性糸球体硬化症のオッズも高かった(調整オッズ比 1.61)。
評価
アメリカの黒人の多くは西アフリカ起源であり、APOL1腎症の本体究明には、祖先集団の研究が不可欠である。ここでの結果は、本質的にはアメリカ黒人での結果を再現するもので、リスクアレルをただ一つ保有するだけでCKDおよびFSGSのリスクが増すことを確認したことが重要である。研究では、DM既往歴を有する参加者のCKDと高リスク遺伝子型との関連は認められなかったが、これはAPOL1の高リスク遺伝子型はDM性腎疾患のリスク要因ではないが、疾患進行のリスク要因となる可能性がある、という観察結果と一致する(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24206458/)。アフリカ人のCKDには他の遺伝子要因と環境要因も関連している可能性が高く、大規模な長期研究が必要である。