APOE3Chバリアントヘテロ保有の、PSEN1E280A バリアント保有によるADリスクの軽減を確定
APOE3 Christchurch Heterozygosity and Autosomal Dominant Alzheimer’s Disease
背景
PSEN1E280Aバリアントに起因する遺伝性アルツハイマー病(AD)患者におけるアポリポ蛋白E3クライストチャーチバリアント(APOE3Ch)の保護能が報告されている。
アメリカMassachusetts General HospitalのQuirozらは、同国アンティオキア出身の1家系におけるPSEN1E280Aバリアント保有者1,077名中、APOE3Chバリアントを1コピー有する27名のデータをマッチさせた同バリアント非保有者と比較した。
結論
認知障害発症年齢中央値は、PSEN1E280Aバリアント保有するAPOE3Chバリアントヘテロ接合体保有者で52歳であったのに対し、マッチさせたPSEN1E280Aバリアント保有APOE3Chバリアント非保有者グループでは47歳であった。脳画像検査を受けたPSEN1E280Aバリアント保有APOE3Chバリアント陽性者2名では、18FDG-PETイメージングにより、アルツハイマー病関与領域での代謝活性が比較的維持されていることが示された。このうち1名の18F-flortaucipir-PETイメージングでは、この家系でのより若年での認知障害発症PSEN1E280Aバリアント保有者と比較して、タウの蓄積が限定的であった。PSEN1E280Aバリアント保有APOE3Chバリアント陽性者4名の剖検検体では、血管アミロイドの病理学的特徴が,PSEN1E280Aバリアント保有APOE3Chバリアント陰性者と比較して少なかった。
評価
この家系の調査を長く続けているコロンビアグループからの集大成的な大規模調査報告で、APOE3Chバリアント保有が、PSEN1E280Aバリアント保有によるADリスクを軽減することを確定した。以後の方向は第一に、同遺伝子変異の研究をさらに多様で大規模な民族集団に展開してゆくこと、第二に、同バリアントとAPOE受容体との相互作用が、如何にしてADの病態形成につながってゆくかを、細胞生物学・トランスジェニック研究で解明してゆくことである。