PTSDの治療に合成麻薬MDMAを利用する:MAPP2
MDMA-assisted therapy for moderate to severe PTSD: a randomized, placebo-controlled phase 3 trial
背景
MDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン)は、「エクスタシー」の俗称でも知られる、麻薬および向精神薬取締法の規制対象となっている幻覚剤であるが、モノアミンの放出と再取り込み阻害により、恐怖記憶の固定化を抑制し、向社会性を促進することから、アメリカを中心として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)への効果の検証が進められている。
アメリカUniversity of California, San FranciscoのMitchellら(MAPP2)は、第3相多施設RCTにより、中等〜重度のPTSD患者に対する同薬の効果を検証した。参加患者を、心理療法に加えて80〜120 mgのMDMAまたはプラセボにランダムに割り付け、Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)の変化を評価した(n=104)。
結論
71.2%が女性、33.7%が非白人、73.1%が重度のPTSDであった。ベースラインから18週後までCAPS-5スコアの最小二乗平均は、MDMA群で-23.7、プラセボ群で-14.8と、MDMA補助療法により有意に症状が軽減した。
Sheehan Disability Scaleによる機能障害スコアの最小二乗平均変化は、MDMA群−3.3、プラセボ群−2.1と、MDMA群で有意に減少した。顕著な感情的・身体的効果のため、MDMA群患者のほとんどは自分の割り付け群を正しく推定可能であった。重症の治療下発現有害事象(TEAE)は、MDMA群の5名、プラセボ群の2名で認められた。死亡または重篤TEAEはみられなかった。
評価
本試験では、MAPP1試験と同様に(https://doi.org/10.1038/s41591-021-01336-3)、MDMA補助療法により、PTSDの症状は有意に軽減された。この結果に基づき、FDAに申請が行われる予定である。治療抵抗性うつ病に対してシロシビン(マジックマッシュルームの成分)が効果を示すなど(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2206443)、サイケデリックセラピーの再評価が進んでいる。


